第1回:相手に伝わる基本とは【前編】
インタビュー/井上さゆり
企画・構成 /高浜希三子
スピーチトレーナー高津和彦(こうず かずひこ)先生にインタビューをして、リモートで伝わる話し方をレクチャー頂くシリーズが始まりました。第1回目は「相手に伝わる基本とは」です。
―― 先生、「相手に伝わる基本」で一番大事なことは何でしょう?
高津 なんだと思いますか?
絶対、みなさん、この答えは間違うと思う。
―― え~!何でしょう? 聞こえるように声を大きくを出す、ですか?
高津 まぁそれも大事だけど。
でも、声が全然聞こえないということはあまりないでしょう。
ボリュームを上げればいいことだし。
答を言いましょう。
「顔を出す」です。
これが基本中の基本です。「人前リモート」の基本の基本。
―― ・・・。 まぁ分かりますけど…。
なぜ「顔を出す」なのでしょうか。出さなきゃダメなんですか。
高津 ダメです。
考えてみてください。なぜパソコンでリモートのビデオ通話をやるんですか。
見せるためでしょう? 何を? 資料や必要な映像をですか?
―― 確かに。 でも「顔」ではないでしょう?
高津 いや、顔です。
資料より何より前に、まず「顔」なのです。
何のためにPC画面の前に座るんですか?あなたの姿を見てもらうためでしょう。
姿を見れば安心度アップ。見なけりゃ信頼度ダウン。 見ると見ないでは、全然、相手の心象が違います。
―― うーん。 もう少し具体的にお願いします。
高津 もし映画が声だけだったら、誰も見ないでしょう?
テレビの特集番組で司会やゲストが話すとき、絶対その話してる人の姿を映すでしょう?
You tubeでイラストだけが表示されてバックに説明の声が流れる動画より、実際に人が 出てきて説明する方が聞いてしまうでしょ。
―― そうですね。 でもなぜ「実際の人」が映ることが必要なんでしょう?
高津 それは「実際の人」は、視聴者の五感に訴えるからです。
表情、声、動き、様々な、その時その時のリアルな変化を見せることで相手の五感に訴える。
例えば「あるある情報」のバラエティー番組で、司会者やそれを一緒に見るゲストの姿を わざわざ、「あるある情報」の説明映像の前に見せるのはそういう理由からです。
―― もしそれが無かったらどうなりますか?
高津 どうなるでしょうか?
井上さんは、実際に話す人の姿を見ると、その情報をより身近なものに感じるでしょう?
でなければ、番組は単なるドキュメンタリーみたいなもので印象は薄いんじゃないでしょうか。
―― そうかもしれませんね。
高津 そう、人は五感の中で視覚、「見る」ことに一番頼るのです。
メラビアンの法則というのがあります。
「人は人と話していて、視覚に一番影響される、55%が視覚情報だ」という。
―― それは深層心理ですよね。
高津 じゃ、証明しましょうか。
「彼、紹介して!」って言って、まず何を求めますか?写真でしょう?
役者の顔を知らずに、顔も見ずに、熱列なファンになれますか?
―― ですよね!
高津 これは全部、顔を見たい、見たら安心する!ってことなんです。
―― なーるほど!
高津 なのにリモートで顔を出さない。
ここからはちょっと説明が長くなるので、いったん休憩しましょう。