第5回:伝わる話し方の第一歩【前編】

インタビュー/井上さゆり
企画・構成 /高浜希三子

スピーチトレーナー高津和彦(こうず かずひこ)先生に、リモートで伝わる話し方をレクチャー頂くインタビューシリーズです。第5回:伝わる話し方の第一歩【前編】」です。

スピーチトレーナー高津和彦のインタビューレクチャー

―― ここまでいろいろな「人前リモート」の基本を教えて頂いたんですが。
でも現状は理想とちょっと違うんじゃないかという気がするんですよ。

高津 ふーん、どんなふうに?


―― いろんな友達のリモート会議の話を聞いていたら、既に決まったことを担当者が読み上げてそれをみんな聞いて、全体で確認して終わりという。会議というより「報告会」ですね。 ディスカッションしない、質問は実質上は禁止というか、誰もしないという。だから顔出しなんか必要ないっていうんです。

高津 あー、そういうことか。そういえばベストスピーカーセミナーで、リアルのグループ講座だけど、そんな会議の話、生徒さんたちがよくしてたなぁ。それが一般的な日本の会議なんだなぁ。


―― そうなんですよ、実のところ。

高津 つまり、これまでの予定を決めて、調和的に進めるという会議のあり方、それが単にリモートに移っただけ。


―― そうなりますね。

高津 決まったことを、「はい、一応ここで皆さんに言いましたよ」というその事実が最重要であって、そこには、どうすればより伝わるか、聞き手にアピールできるかなんかは必要ないってことだ。


―― そうかもしれませんね。

高津 そんな日本の「決められたとおりに進める」文化、その代表が国会答弁ですね。


―― そうです、まさにそうですよね、決められた原稿を読むという。

高津 だからみんなリモートでも顔出ししない、別に相手に伝わる必要がないというスタンスになってしまうんだなぁ。


―― ええ。

高津 でもこれは問題だよ。そもそも会社での会議ってなんのためにやるのでしょう?


―― うーん、その時その時の仕事の問題点をみんなの経験を集めて解決するとか、新しい製品やチャレンジに対するやり方、それをより多くの人の知恵でまとめるとか。

高津 ですよね? 


―― そういうふうに見ると、この今の会議のあり方、良くないですよね。会社の自由な発展がストップすることにもなるという。

高津 そう!そういっても過言じゃない。だからまず会議のやり方を変えていくのも一つの方法。
たとえば、もっと参加者に発言をうながすとか。これは上に立つ人、ファシリテーター、議長が率先してそう持っていく。


―― なるほど。

高津 言われたらやる、出来る人はたくさんいるんだから、それを逆説的に取って「言われたからやった」にもっていくと、みんな結構、発言する。そうするともっとみずから考えるようになるんだ。


―― ほんとですね。みんなが少しずつ変わっていくことが、会議改革の第一歩ですね。

高津 次にもう一つ大事なこと。


―― なんでしょう?

高津 会議はあなたがいなくても進む。
じゃ、あなたがいないと進まないものは・・・?

【後編】に続く