第2回:相手に伝わる基本とは【後編】

インタビュー/井上さゆり
企画・構成 /高浜希三子

スピーチトレーナー高津和彦(こうず かずひこ)先生にインタビューをして、リモートで伝わる話し方をレクチャー頂くシリーズが始まりました。第2回目は「相手に伝わる基本とは【後編】」です。

スピーチトレーナー高津和彦のインタビューレクチャー

―― 休憩でリフレッシュしました!引き続きお願いします。
先ほど高津先生が言われたように、リモート会議などで顔出さない人、結構います。 言われてみると。


高津 そうでしょ、そんな人、いるでしょ。
まず経験的事実、「話す時に顔が見えているか見えないかで伝わり方は100%違う」。 定理と言っても過言ではない。
プレゼン、スピーチ、会話の信頼性、説得力、印象が全く違ってきます。


―― はい、覚えてます。 以前、高津先生に「伝わる話し方」について伺った時、そう教えて頂きました。

高津 それはリモートでの「伝わる話し方」でも同様に当てはまります。 が、リモートにおいては、なかなかそうじゃない。 さすがにレッスン指導の際に「顔出し無し」はありませんが、これまで、僕は リモートで話し合う場面で、顔を出さない人によく出会ってきました。 あ、それ、出「会い」と言えるかな?顔も見ていないのに(笑)。


―― (笑)それはどんな時なんですか?

高津 例えば、リモート研修の事前打ち合わせ。
研修担当の方たちとリモート会議する際、責任者だけは顔を出して、それ以外の 関係スタッフは「ビデオオフで、声だけで参加」というのがよくあるんです。


―― えっ! 声だけで?  リモート会議中ずっとビデオオフですか?

高津 そうです。でもそれには、そうせざるをえない理由もあるんです。
在宅参加の場合、マンション住まいだと共同WiFiでつないでいることが多いですよね。その環境でビデオ機能使うと、通信量が多すぎとか、WiFiを他に大勢が使用中とかで ダウンしてしまうことがあるんですよ。だから声だけで参加という状況になる。悪気はないかもしれませんが。


―― へーぇ、知らなかったです。そんなことが?! リモートってハード的な不安定要素が結構あるんですね。
でも、話は戻りますけど、人と話す時、顔を見せるっていうのはあたり前のことですよね。だって、ふつう、スピーチやプレゼンテーションでは絶対、顔は相手に見せますよ。


高津 基本はそうなんです。ところが問題は、そうじゃない場合なんです。通信環境が整っているのに「顔出し」しない場合。
つまり、リモートでビデオオフ参加にすれば、ジャージでもいい、スッピンでもいい、 部屋が汚れててもいい、どうせ私は責任者じゃないし、声だけでいいやという。特に誰からも顔を出せと言われていないし。


―― あー、でもその気持ち、ちょっとわかります。

高津 でも実は、この精神構造が怖いのです。
僕も、リモートで密にならずに遠隔地からでも自由に参加できるというメリットは認めます。しかし、本来、人前で話すということは「自分の最大限の良いところを見せる。服でも、持ち物でも、表情でも。そして相手に好印象を与えて、信頼感を持ってもらう。
これがまず第一の条件です。こういうことを教えられ、自らもやってきた。 だって、リアルで人前で話す場合を考えてみるとわかるでしょう? きちっとスーツ着て、お化粧して、できるだけベストの姿でその場に臨みますよね。


―― なるほど、そうです

高津 なぜ今、僕がわざわざこんなことを言うかというと、顔を出さないことでコミュニケーションの 根幹の精神性が気付かないうちに蝕まれていく、このことをとても危惧しているからです。


―― そこまで深く考えたこと、ありませんでした…。

高津 コロナ以前は企業が求める要件、それは「コミュニケーション能力」だったのです。どの社長もそう言っていた。
それが今、人と会わないようにしましょう、話さないようにしましょう、になってきた。それが、顔も出さなくていいということにまでなってきている。  


―― そう…、ですね。

高津 冒頭で言いましたが「顔を出さずにコミュニケーション」は問題です。
なぜなら、リモート「顔出し無し」では、誰がそれを言ったか頭に残りません。頭に残らないから、発言は議事録のPDFを開いてみないと確認できません。当然、印象には残っていません。印象に残るというのは、言われなくても、「あぁ、あの人、あれを言った」とパッと言えることです。つまりそれが「話が伝わった」ということなんです。


―― おっしゃる通りです。

高津 だから結論! 伝えたいと思ったら「顔出し」しよう!


―― はい!