第4回:相手に伝わる外観【後編】

インタビュー/井上さゆり
企画・構成 /高浜希三子

スピーチトレーナー高津和彦(こうず かずひこ)先生に、リモートで伝わる話し方をレクチャー頂くインタビューシリーズです。第4回目は「相手に伝わる外観【後編】」です。

スピーチトレーナー高津和彦のインタビューレクチャー

―― 高津先生、先ほど言われたそのおもしろいエピソード、聞かせてください!

高津 これはグループレッスン、実地対面での話なんですが、「人前リモート」に通ずることです。
いやむしろ「人前リモート」でこそと言える!


―― えー、なんですか?

高津 コロナ前、ベストスピーカーでは、東京・名古屋・大阪で毎月講座を開いていました。で、まず開始後すぐに一人ずつ話してるところをビデオに録るんです。自由に話してもらう。ああしろこうしろとは僕はほとんど言わない。


―― いわゆるビフォー映像ですね。

高津 ある時、インフルエンザが流行っていてマスクをしている人も多かった。 大抵は録画の時だけはマスクを外すのですが付けたままの人もいた。で、レッスンの最後、もう一度録画する。


―― アフター映像ですね。

高津 で、最初から最後までマスクをしていたA君は、その時、マスクを取ったの。講座が終わってから「なんで取ったの」と聞いた。 すると彼は「やっぱり、表情、見えないですから」と答えた。  


―― すごい!

高津 彼は、みんなが取ってるからじゃなく、表情見えないから、と自ら悟って言ったんです。顔がマスクで隠れてると、それが自分でも不満だったんです。


―― そういうことなんですね!

高津 たとえば、昔の映画、見てください。犯人が逃げる時はマスクをします。それは、誰かわからないように隠すからなんですよね。 それをリモートでやっちゃだめです。


―― (笑)マスクすると犯人だってすぐわかるんだけど!

高津 そうですよね(笑)。 でも一番大事なこと。それは、自分が伝えようともしないで、「伝わらないのはリモートだから仕方がない」と環境のせいにすることです。


―― みんなよく、伝わらないなぁって言ってます。  

高津 具体的に言うと、ワイキキビーチ写真の画面を出して参加してて、マイクミュート。そこにいるかいないかもわからない。
実際いないことが良くあるんですが(笑)、いても発言しない。もうそれは幽霊です。まだ幽霊ならいることがわかる!


―― セミナーなんかでは、みんな参加者は貼り付け画面です。

高津 セミナーは、もうお金払っててこっちは聞くだけだから顔が出てても出てなくっても関係ない。
でも、もしあなたが相手を説得する立場だったらどうでしょうか、相手は納得します?
そう、あなたがセミナーの先生。顔出さずに、聴衆を納得させられますか。


―― ありえない。

高津 そうなんです。あなたは無数のどうでもいい聴衆じゃない。
そこにいて、意味のある人で、意味のあることを示し、言わなきゃならない。 「人前リモート」では、そう思いましょう。


―― だったら、顔出しはイヤだなんて言ってられない。

高津 そう。先日、友人から聞いた話。
彼は大学教授なんだけど、会議をZOOMでやった。そしたら、ある教授が自分の顔写真、貼り付け参加だった。


―― ふんふん。

高津 で、問題提起されて、その決を採ろうしたら、顔写真の教授、呼びかけにも応じず、その場に不在で大騒ぎになったんですって。


―― えー!そんなことあるんですか?

高津 まぁ、その人はたまたま急用で席を外したらしいけど。でも確信犯だったら、それこそ幽霊よりもたちが悪い。
こんなふうに最初の機会に顔を出さない、ずっと出さない、最後まで出さない、こんな風潮が会議に、社内に、グループに、社会に蔓延してくと恐ろしい結果になります。どこかでこれにストップ掛けないと。特に上の立場の人は。


―― おっしゃるとおりです。

高津 でないと、「自分は出たくない」の日本だったら、負けちゃいますよ。世界スタンダードは「自分が出たい」だから。


―― そうですよね、海外はどこでもそうですよね。
勉強になりました!ありがとうございました。