第3回:相手に伝わる外観【前編】

インタビュー/井上さゆり
企画・構成 /高浜希三子

スピーチトレーナー高津和彦(こうず かずひこ)先生に、リモートで伝わる話し方をレクチャー頂くインタビューシリーズです。第3回目は「相手に伝わる外観【前編】」です。

スピーチトレーナー高津和彦のインタビューレクチャー

―― 前回2回にわたって「相手に伝わる基本とは」という内容で、「人前リモート」の基本中の基本、「顔出し」について熱く語って頂きました。 今回はどんなことについてのお話でしょうか?

高津 「顔出し」とくれば、次は「外観」です。
つまり、あなたの印象、表情が相手から見てイイなと思ってもらえるかということです。


―― あ~、それ、パソコンの画面レベルでは全然考えたことなかったです。 

高津 そうでしょ?! みんな、そのことに気づいていない。
でも実はステキな外観が「人前リモート」において非常に重要なんです。


―― どうすればいいのでしょうか? 

高津 まず最初に「映り方」です。良く見えるようにするいろいろな要素があります。
カメラの位置、部屋の明るさ、補助ライト、背景、服装などです。


―― えーっ!そんなにいろいろ。 

高津 そうです。具体的に言いましょう。
まず、カメラの位置について。画面の中心より顔が少し上になるように配分する。
よく画面の下の方に顔のあご部分がちょん切れて写っている人いますよね。


―― いますね。 

高津 履歴書の写真、思い出してください。胸のみぞおちが画面最下部に持ってくるくらい。これが一番自然で、心地よく思えるのです。


―― へぇ~。そうなんですか。 

高津 また、その位置にすると、上半身の手の動きも相手に見えます。ちょっとした躍動も見えるということです。動きがあって、それは人を引き付けるということです。


―― なーるほど! 

津 次に、カメラレンズを下からあおらない、つまり下から見上げて顔を写さない。 こうすると顔の相が変わるし、下ぶくれ、太って見える。


―― これ、重要ですね! 

高津 そして逆光にならないようにする。後ろに窓があれば閉めること。顔が暗くなります。「暗い」は印象悪い。なんでも。


―― カメラ位置だけでもそんなに多くのポイントがあるとは…。 知ってるか知ってないかで、相手に与える印象が全然違ってきますね。 

高津 そうなんです。 実際、リモートレッスンでそれらを受講生に指摘すると、みんなびっくりする。


―― そうでしょうね。私も聞いて驚きましたから。

高津 その他の要素についても、同じように多くのポイントがあります。 ここで言い出すと長くなるので。それぞれの細かい事はレッスンで説明しています。


―― はい、知りたい人はぜひレッスンを(笑)。

高津 そして、やはり「表情」です。何が良い表情を作るのか?
目、口、手などそれぞれのパーツごとに、絶対外せないポイントがあります。 特にリモートの場合は画面を介して相手の姿を見ているため、現場にいる時のような「熱」が伝わりにくいのです。


―― 特に注意すべき、一番のポイントを教えてください!   

高津 それは何と言っても「目線」です。 まず、画面のみんなを見る目線では、実は「みんなを見てない」ということです。


―― ??? はぁ?

高津 分かりにくいですよね。詳しく説明しましょう。


―― お願いします。

高津 あなたが人を見る、その目線は画面に映る相手の像を見ています。 しかしカメラレンズはパソコンの上部に付いているので、あなたを上から写すことになる。つまり、あなたが相手を見て話をすると、相手には下を向いてる、と見えるのです。
逆にカメラレンズを見て、画面中の相手を見ないで、話せば、それは相手にとっては自分を見て話してくれてる、と見える。


―― なるほど。  

高津 なのに、実際はあなたはカメラレンズの下を見ている、だから自分の目を見てくれてない、というふうに映るのです。


―― そういうことなんですね。  

高津 そして、あなたの顔がレンズに近ければ近いほど、目線は下を向いているのが顕著に捉えられるてしまう。逆に、離れるほど目がどこを向いているか判断しにくくなります。 だからと言って離れすぎては、あなたも画面が見えなくなる。
で、結論としては、ちょっと離れ気味で、相手から見て、目が自分を向いてると錯覚されるくらいの距離がいい。


―― 納得です!でもどうして、こんなにポイント、たくさんご存知なんですか? 

高津 僕は若いころ、アナウンサー養成学校で、プロの技術を学びました。その後、実際にTVニュースを読んだり、レポーターやコメンテーターとして出演したり、多くの映像経験があります。


―― へぇ~、すごいです!  

高津 ロケに行って、カメラマンがどう撮るか、何をどう画面に入れるか、それを聞いたりする。 アナウンサーとして撮られる方と、カメラマンの撮る方の両方がわかってきた。 だから、「どうすれば画面を通して相手に伝わる外観になるか」がわかってるんです。 「人前リモート」も、これと同じことが言えるのです。


―― 映像を知るプロのノウハウですね! 私もカメラ位置と目線に注意して、リモートでのいい撮られ方、やってみます。 

高津 この「人前での好印象」について、おもしろいエピソードがあるので休憩をはさんでお話ししましょう。

【後編】に続く